秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
(仕方ないよね)

そう思いながら、デスクに向かう。その時。

「愛果」

低い声が、はっきりと響いた。

一瞬で、周囲の視線が集まる。

「はい」

振り返ると、そこに立っていたのは社長だった。

いつもと変わらない表情。揺らぎなんて、一切ない。

「今日のスケジュールを確認する」

「承知しました」

近づいて、タブレットを差し出す。

その距離に、またざわめきが起きる。

でも――社長は一切気にしていない。

「午前は会議が二件、その後――同行してくれ」

「……はい」

自然な流れで告げられる。

まるで、何も変わっていないかのように。

(……強い)

この人は、本当にぶれない。

周囲がどう思おうと、関係ない。

「何か問題があるか」

視線が、こちらに向けられる。
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