秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
淡々とした口調。

けれど、どこか冷たい。

「あ、俺が手伝ってただけで……」

村田さんが少し慌てて言う。

社長の視線が、ゆっくりと彼に向けられる。

「業務に余裕があるなら、営業の資料でも見直したらどうだ」

「……はい」

短く返事をして、村田さんはその場を離れた。

残された空気が、少しだけ重くなる。

「愛果さん」

「はい」

「手が空いているなら、すぐに戻れ」

「……かしこまりました」

それ以上、何も言えなかった。

社長室に戻るまでの間、胸の奥がざわつく。

(今の……どういう意味?)

社長は、誰に対しても公平なはずだ。

感情を見せることなんて、ほとんどない。なのに。

「コピーは?」

部屋に入るなり、社長が聞く。

「すぐに取りに行きます」

「必要ない。データで十分だ」
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