秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
「……疲れただろ」

「いえ……」

そう答えながらも、本当は少しだけ疲れていた。

心の方が、特に。

「嘘だな」

横から視線が落ちる。

「顔に出てる」

「……すみません」

思わず謝ると、軽く息を吐かれる。

「謝るな」

短く言われて、言葉が止まる。

そのまま、ふいに手を取られた。

「……社長」

「少し、じっとしてろ」

低く囁かれる。

そのまま、肩に引き寄せられる。

「っ……」

近い。あまりにも、近い。体温が、伝わってくる。

(こんな距離……)

誰かに見られたら、なんて考える余裕もない。ただ――

「……怖かったか」

ぽつりと、落ちた声。その言葉に、胸がぎゅっとなる。

「……はい」

小さく頷く。否定できなかった。

「全部、壊れるかと思いました」

正直な気持ちが、こぼれる。
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