秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
引き出しを開ける音。その動きに、なぜか胸がざわついた。

「愛果」

呼ばれて、思わず背筋が伸びる。

「はい」

振り返った社長の手には――小さな箱があった。

(……え)

息が止まる。

ゆっくりと近づいてくる。

その一歩一歩が、やけに鮮明に感じる。

「……座れ」

低く言われて、ソファに腰を下ろす。

その前に、社長が立つ。距離が近い。

「……社長、それ……」

言いかけて、言葉が止まる。

分かってしまったから。

その箱の意味を。

社長は何も答えず、静かにそれを開けた。

中にあったのは――指輪。

繊細に光を反射する、小さな輝き。

(……本物、だ)

現実が、一気に押し寄せる。

「どうして……」

声が震える。こんなこと、想像もしていなかった。

「言っただろ」
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