秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
社長の声は、いつもより少しだけ柔らかい。

「最初から決めていると」

そのまま、私の前に膝をつく。

(……うそ)

思考が追いつかない。

こんな光景、現実じゃないみたいで。

「愛果」

名前を呼ばれる。

その声に、すべてを引き寄せられる。

「俺と結婚してください」

まっすぐな言葉。迷いなんて、一切ない。

(……どうして)

こんなにも、迷いなく言えるの。

婚約を破棄してまで。全部を変えてまで。

「……私で、いいんですか」

やっとの思いで出た言葉。

それでも、確かめずにはいられなかった。

「お前がいい」

「お前じゃなきゃ意味がない」

その一言で、胸の奥がいっぱいになる。

(……もう)

逃げる理由なんて、どこにもない。

「……はい」

小さく頷く。涙が、こぼれる。
< 87 / 90 >

この作品をシェア

pagetop