秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
「よろしく、お願いします」

その瞬間、司の表情がわずかに緩んだ。

指を取られて、そっと指輪がはめられる。

ぴたりと収まる感覚。

それが現実だと、教えてくる。

「……似合うな」

低く、満足そうな声。

そのまま、優しく抱き寄せられる。

「これで、完全に俺のものだ」

耳元で囁かれる。

(……うん)

もう、分かってる。最初から、逃げられなかった。

そして――逃げるつもりも、もうなかった。

指輪の重みが、まだ指に残っている。

現実なのだと、何度も確かめるように。

「……愛果」

名前を呼ばれて、顔を上げる。

その瞬間、腕を引かれて抱き寄せられた。

「……社長」

胸に顔が触れるほどの距離。

鼓動が、直接伝わってくる。

強く、でも優しく包み込まれる感覚。
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