闇深兄の溺愛 〜甘いデザートには、一滴の毒を〜

第1章 甘い毒は日常に溶ける



大学の初登校を終えた夜。



「俺の部屋で夕飯を食べよう」



颯に誘われ、私はお隣の
201号室へと足を運んだ。



ドアを開けた瞬間、



ふわっとデミグラスソースの
甘い香りが鼻をくすぐる。




「わぁ、美味しそう! お兄ちゃん、本当に料理上手だよね」




目の前に置かれたのは、
私が一番好きなオムライス。


目を輝かせる私を見て、
颯がふっと笑う。




「一人暮らしだと食生活が偏るだろ? だから、美桜の健康管理はこれから俺の役目だ。……朝と夜は、一緒に食べよう」

「えー、でも毎回は大変だし……颯も疲れちゃう」

「いいんだよ。お前の嬉しそうな顔を見てるのが、俺の一番の栄養になるから」




そう言って颯は、私のコップにお水を入れ、
丁寧にサラダを取り分けてくれた。




彼は甲斐甲斐しく
私の世話を焼いてくれるけど、

自分はほとんど手をつけず、
私が頬張る姿を微笑みながらじっと見つめている。




その澄んだ瞳に時々
吸い込まれそうになって、


私はオムライスに視線を落とした。




その時、ふと思った。




(なんでこんなに料理もできて、優しくて面倒見もいいのに、彼女いないんだろう……)




スプーンを持つ手が止まる。




さっきもマンションの前で
女子高生に声をかけられていたのに、

笑って軽く流していたし、



ちらっと見えたスマホには
何件もの通知が来ていたのに、

颯はずっと無視している。




けれどその疑念は、
顔を上げた先にあった笑顔に、



すぐに洗い流されてしまった。




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