闇深兄の溺愛 〜甘いデザートには、一滴の毒を〜
***



公園から帰宅し、自分の部屋のベッドに入る。



瞼を閉じても、
さっきの颯の言葉が頭から離れず、

なかなか寝付けなかった。




——お前が俺を兄にしたんだ。だから……責任取ってよ。




その声が、表情が、
脳裏に浮かんでは消えてを繰り返す。



そんな時、コンコン、と
小さくドアがノックされた。




「……まだ起きてるか?」




小声で呼ばれ、ドアを開ける。



「……お兄ちゃん? どうしたの、こんな時間に」

「いや……枕が変わると寝付けない性格なのは、お前も知ってるだろ。……少し、顔が見たくなって」



颯は困ったように笑うと、
さらっと私の部屋へ入りベッドの端に腰を下ろした。



「なんか、懐かしいね。昔もこの窓からお兄ちゃんの部屋覗いて、夜にこっそりそっちの部屋に行ったりしたっけ」

「……ああ。お前が雷を怖がって、俺の布団に潜り込んできたこともあったな」



颯は懐かしそうに部屋を見渡した後、
私をじっと見つめた。




「………今日だけ、隣で寝ていいか?」




「完璧な兄」が見せる、嘘みたいな弱音。




私は断る理由を見つけられず、
「うん、いいよ」と彼に微笑んだ。



***




——シングルベッドに二人。




昔はこのベッドに余裕で収まったのに、




大人になった今の私たちには、

この場所はあまりにも狭すぎた。




私は颯に背中向けて目を閉じる。




シーツ越しに伝わってくる
彼の体温が、あまりにも熱くて

心臓がうるさく鳴っていた。




「……美桜。こっち向いて」




静かな声に、寝返りを打つと、
目の前には颯の端正な顔があった。



暗闇の中でも、
彼の瞳だけは濡れたように輝いている。



「これじゃ寝れないって……」

「じゃあ、これなら?」



颯は私を優しく胸元に引き寄せ、
背中に腕を回した。




それは昔と同じ「兄」としての、
どこまでも優しいハグ。




彼から実家のボディーソープの
香りがするのが、


不思議なくらい新鮮で、
懐かしくもあった。





「……いい子だ。おやすみ、美桜」





だけど私は、




私の肌に触れる彼の指先が

微かに震えていることに、




気づかないふりをしていた。




***
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