闇深兄の溺愛 〜甘いデザートには、一滴の毒を〜
第11章 青色と朱色のキャンバス
——二ヶ月という時間は、
長いようであっという間だった。
夏休み、アスファルトから
ゆらゆらと陽炎が立ち、
外は溶けそうなほどの暑さの中、
私は201号室という涼しい檻の中で、
颯に「管理」される心地よさを
骨の髄まで叩き込まれていた。
「最近、お兄さん大人しくない?」
碧くんが隣で大きな看板にペンキを塗りながら言う。
夏休みが明けて一週間。
まだ残暑が残る大学の校舎の裏で、
私たちは一ヶ月後の文化祭に向けて
立て看板の制作をしていた。
「あ……うん。最近は『頑張れ』って送り出してくれるし、夜も遅くなるの、許してくれてるよ」
「なんか……逆に怖えな。あの夏祭りの時の顔、俺忘れられないんだけど」
碧くんが苦笑いしながら、
看板にムラなく青いペンキを広げていく。
作業に集中する彼の横顔は、
額に流れる汗さえも、
キラキラと輝く
雨上がりの向日葵のように爽やかだった。
私もその姿を見習うように
隣で色を重ねていく。
「……ふぅ」
一区切りついたところで、
私は汗で顔にまとわりついた髪を耳にかけた。
「これであとは、文字の部分だね」
「うん、ペンキの色は——」
言いかけたその時、
碧くんの顔を見て、言葉を止める。