闇深兄の溺愛 〜甘いデザートには、一滴の毒を〜
***



「うーん」



翌朝。颯の部屋で朝食を終えた私は、

一度自分の部屋——202号室に戻り、
二枚のワンピースを鏡の前で見比べていた。




「美桜、そろそろ行く時間——………迷ってるのか?」




背後から突然響いた声。


振り返ると、颯が壁に寄りかかりながら、
いつの間にか入り口に立っていた。




「それは、露出が多すぎる」




颯は私が手にしていた
ミニ丈のワンピースを見てわずかに目を細めた。




「えー、でもこれ可愛いよ?」

「ダメだ。美桜は可愛いから、変な”虫”が寄ってきたら困る。……そうだろ?」

「……む、虫はちょっと……苦手だから困る」




颯はふっと笑うと、
丈の長い方のワンピースを指差す。




「俺は、こっちがいいと思うよ。……美桜の白さが引き立つし、上品な感じがする」




私は結局、「そこまで言うなら……」と
彼が選んだ方のワンピースに着替えた。



そして靴を履く私の隣に、彼は平然と並んだ。



「俺も行くよ。お前一人じゃまだ迷うだろうから」

「もう一人でも行けるよ……多分」



玄関の鏡で前髪を整える颯が、
鏡越しに私を射抜くように見る。




「多分、だろ?」




彼は「ほら行くぞ」と私の頭を
ポンと軽く叩き、扉を開けた。




(もうっ、大丈夫なのに……)




そう思いつつも、
その過保護さが嬉しくもあった。




颯が私の部屋の合鍵がついた
キーホルダーを、ポケットの奥に


そっと隠したことを知らないまま。





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