この家、全員まともじゃない。①
『 お母さん……?』
澪くんを見送った後、私は暇になった。
だから、一旦部屋を出てみる。
すると、蓮くんに鉢合わせ。
「やほ。どしたの。」
「えっと……、暇で……」
なんか、蓮くん少し顔赤くない……?
いや、気のせいか。
「ふーん。じゃあ散歩してきたら?」
「あっ、それいいねっ……!」
外の空気を吸いたいし、行ってこよっと!
「えー、冗談のつもりだったんだけど。意外とアウトドア派なんだ。」
「まあ本当のところ家でゆっくりしてる方が好きだけどねっ……」
ゲームとか本読んでる方が得意だしっ。
「じゃねじゃね〜。」
「うんっ……!」
私は手を振り返して、玄関へ行った。
靴を履いて、ドアを開く。
ふわっと、新鮮な風。
気持ちいい〜!
なんか、みんなと打ち解けられた気がする。
でも、やっぱり寂しいな……
お母さん……。
『この世は、お金でできているのよ。』
その言葉は、酷く私の胸に刺さった。
ずっと信頼してた唯一心から許せるお母さん。
……でも、今は少し違う。
藍くんが、優しく気軽に接してくれたからだと思う。
世界で一番大好きだったお母さん。
今どこに居るの?
「────琴音。」
16年間何回も聞いてきた、落ち着いた声が耳を通った。
「お母さんっ……?」
びっくりして振り向くと────。
冷たい顔をしていた。
思わず右手をぎゅっと握ってしまう。
痛かった。痛かったんだよ、お母さん……。
私は視界が滲みそうになるのを堪えて、しっかりと口を開いた。
「……どうして、あんな事言ったの。」
「事実でしょ?」
間髪入れずにそう言ったお母さん。
なに、それ……。
「……正直、あんたを産みたくなかった。」
……え、?
待って、聞き間違い……、だよね……?
「裕福な家と結婚したし。あんたには用無し。」
「あなたが産まれなかったら、お父さんとは離婚しなかったのに。」
「ずーっと目障りだったわ。……だから、死んで。」
次々の並べられる辛辣な言葉。
精神が、ボロボロに無くなっていく。
お母さんは、ポケットからナイフを出した。
「ま、待って……。お母さんっ……!」
「もうあんたのお母さんじゃないわ。」
あんた……って……。
私の名前すら呼んでくれないんだね……。
私に歩み寄って行くお母さん。
もう距離は、30cmしかない。
「さようなら。さっさと地獄に落ちてね。」
ニコッと笑ったお母さんが、悪魔のように見えた。
私はショックで何もできなくて、ただただ立ち尽くすしかなかった。
私の腹部に、ナイフが刺す瞬間────
「─────やめろ。」
お母さんが、一瞬で吹っ飛んだ。
私の大好きな、ある男の子の声が聞こえた────。
──────── 続く ────────


