おれが、おまえを、可愛くしてやる。
 こんなときにもどうしてやさしい声をかけられるんだろう。わたし――あなたを傷つけたのに。

 処女って面倒。さっさと捨てたい。……二十歳過ぎてもバージンなんて絶滅危惧種、だから卒業したい。

 ……っていう願望に、大切な上司である浅葱さんを巻き込みそうになったんだ。彼のほうがストップしてくれてこころからほっとしている。……簡単に、捨てちゃ、駄目だよねやっぱり……。

「あー。ほんとごめんなさい浅葱さん」

 と呟きつつ台所のシンクの前へ行くと……ふぉお。アイランド式キッチンだ。すごい。そして、シンクがぴっかぴか。見れば、洗いかごのなかに食器が。……って浅葱さん、自炊……してるんだ。しゃもじとかある。……って。

「……あああ。人様のプライベートを勝手に覗かない覗かないっ!!」

 ぱしぱしほっぺを叩いてとにかくは歯磨きだ。トイレだ。そして遠慮なく……ベッドに入らせて頂く。……ってわお。

「すんごい気持ちいい……」まくらもマットもふっかふかだ。背や腰、頭の後ろにやわらかく当たって、超絶的に気持ちがいい。そして。

「……浅葱さんの、匂いがする……」
< 15 / 225 >

この作品をシェア

pagetop