おれが、おまえを、可愛くしてやる。
 確かに。琉実の化粧好きはおれと同じくらいに病的なものだった。学校から帰ったら真っ先になにするかって……肘まで服の袖をまくって石鹸を泡立てて丁寧にあらい、それから顔を洗い――保湿。どの季節にどんなスキンケアがいいのか。それから、どの化粧水がいまの自分に合うのか。時間や季節が違うだけで、肌の好むスキンケアは変わる。女心のように。ちょっと乾燥してるな、ってときは最後にバームなんかを塗ってやると肌が生き返る。水を与えられた生け花のように。

 そういった、季節や肌のコンディションによってメイクやスキンケアを変えるのはおれにとっては当たり前のことで――他方、琉実には物珍しい考え方だったらしい。彼女もおれと同じ乾燥肌で、真冬の乾燥をどう切り抜けるのか――真夏はべたつかずにきちんと保湿するにはどうすればいいのか――色々と研究した。『美容研究ノート』なんてのを作って、互いに記録したほどである。病的なまでにおれたちは化粧が好きだった。
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