おれが、おまえを、可愛くしてやる。
 何故。中学から別々の道を歩んだのか。それは――おれ自身、恥ずかしくなってしまったからだ。おれが琉実の家に通い詰めていることは学校の連中がみな知っていた。からかわれることもあった。小学生なのにやたらと美意識が高い――そのことに対する偏見もままあった。なので。卒業後はやっぱりひとり、美容の道を究めるほうに集中したかったのだ。

 部活は、中学ではテニス、高校ではサッカーを選んだ。美容を研究する部活なんて存在しなかったから――そもそも男が肌のお手入れをし、化粧をする、ということ自体が、珍しい時代だった。IKKOさんがもう少し早くポピュラーになってくれてたらな、なんて思う。

 スポーツをすると必然汗はかくし皮脂量は増えるが。それでもおれは日焼け止めをこまめに塗り、自分磨きを怠らなかった。だから。そのおかげもあってか。美容専門学校で琉実に再会した際に言われた台詞をおれは今でも覚えている。

『れんちゃんひさしぶり。相変わらず綺麗だねー』
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