おれが、おまえを、可愛くしてやる。
 おれの告白を受けて琉実はこんなふうに答えた。

『れんちゃん。ごめんね。わたし――幸一と結婚するの。だから……きみの気持ちには、応えられない』

 それまで、兄と琉実が交際していることに気づかなかった己の間抜けさにも笑えた。まったく――恋愛という崇高なドラマにおいて、主役はあいつらでおれはモブでしかなかった。

 でも。いまは違う。おれが愛しているのは、望海。おまえだけだ。だから、おまえだけは――惑わされないで欲しい。過去の、余計な要素なんかに。

 そう思い込もうとするものの――兄貴の記念パーティが迫ると、おれの胸のなかは、不安で押しつぶされそうになる。二人そろった姿を見かけるのは何年振りだろう。兄貴と――琉実を、本気で、祝福出来るのか? 恋敵とも呼べる相手を。……最近、眠りが浅くてしんどい。起きたときに、……琉実とのあれこれを夢見て、脳がめいっぱい疲れた状態で起きるんだ。こんなおれの煩悶に終わりが見えるのか――答えはまだ、見えなかった。

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