おれが、おまえを、可愛くしてやる。

「あ……そうなんですね」初耳だ。だが、表情を硬くしないよう意識したつもりだ。「蓮二さん……美容師としても一流ですよね。わたし、髪を切って貰ったことがあって……すごく、素敵なカットにして貰いました。今日のメイクとヘアセットも彼が……してくれまして」

「そっか。あいつが、女の子の髪を切っただなんて。珍しいな」ふっ、と幸一さんは笑った。「専門学校時代は、よく、……琉実と髪の切り合いっこなんてしてたもんだが。おれもちょいちょいカットされたよ。髪が伸びないのなんの」

 ――何故、蓮二は、そのことを伏せていたのだろう。暗い暗雲のようなものが胸の内に立ち込めるのを感じる。……いや。

 必要がなかっただけなのかもしれない。別に、言う必要なんて……ないじゃない?

 それから関係者のかたが周りを囲んだのでわたしはすこし離れた。シャンパングラスが配られ、みんなで乾杯をした……のだが、蓮二がまだ、……戻ってこない。

 なんとなく……嫌な予感がする。この手の予感に外れはない。
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