おれが、おまえを、可愛くしてやる。
 乾杯の余韻が落ち着いてから、わたしは、幸一さんにその場を抜けると断りを入れ、あちこちを探した。二階にも一階にもいない。瀟洒できらびやかな世界のなかで、自分だけが異分子のように感じられた。何故なら――。

 屋上で、二人の姿を、見つけた。わたしは――声をかけられなかった。

 淡い、ブルーのドレスに身を包む琉実さんは、おとぎ話に出てくるお姫様のようだった。その美しい彼女が涙に濡れ……蓮二の支えを、必要としている。露わな素肌が寒空の下、寒々しかった。その背を包む蓮二の大きな手を認め――胸が痛んだ。

 わたしの存在に気づくと蓮二は、辛そうに顔を歪めた。なにを切り出すのかわたしは距離を詰めて待つ。そんなわたしに、蓮二は、……

「ごめん望海。……せっかくだけど今日は、……琉実を送って、そのまま帰る。一人にさせてごめん。彼女。体調を崩していて……本当にごめん」

 せっかく、あなたにメイクをして貰って、髪もセットされて、ドレスで決めて。お姫様みたいになれたのに。――切ない現実が、待っていた。

 *

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