おれが、おまえを、可愛くしてやる。
「琉実は、あくまで……過去、好きだった女性だ」

 改めて聞かされると世界が揺らいだ気がした。自分が信じていた世界が……この目で見て感じて、これが真実だと思い込んでいたものが、崩壊する瞬間が。

「いまは、彼女に、恋愛感情は、抱いていない。……ただ、昨晩は。放っておけない状態だったのでついていた。……そのことできみを傷つけてしまったと思う。申し訳ない」

「あ、やまら……ないで」涙が出る。虚しくなる。「謝られると辛い……こっちが加害者みたいに思えてくる」

「加害者ってなんだよ」むっとしたように蓮二が言う。「こういうことに、……加害も被害もねえだろ。……おまえ、目の前で加藤が倒れたら、放っておけんのかよ。あいつが溺れてたらおれなんか放っておいて真っ先に助けるだろ?」

 胃のなかがむかっとした。「なにそれ。逆切れ? ひどすぎる。だいたい、なんでここで、加藤くんが、出てくるのよ。加藤くんは昔好きだっただけで、いまは、あなたが一番なんだよ。

 溺れているひとを見れば確かに助ける、……かもしれない。
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