おれが、おまえを、可愛くしてやる。
「分からないよっ!!」とうとうわたしは叫んだ。「琉実さんを見るたび、負けてる、……って思うの……。だってあなたの目に……琉実さんに対する情愛が、まざまざと見て取れるから……。気づかなかった? あなた、時々、琉実さんを、心底愛おしい、って目で、見てるんだよ……。

 過去の恋を振り切れないあなたに、なにが、言えるの。

 結局あなたが選んだのは、わたしじゃない。琉実さん……なんだよ」

「平行線だな」と腕組みをして蓮二が座った。「いまは、……なにを話し合っても互いに傷つけあうだけだ」

「そうだね」とわたしはコートとバッグを手に、立ち上がった。「……帰る。言っておくけどわたし、あなたと別れるつもりなんかないから。荷物の移動は始める。ただ、……互いの気持ちに整理がつくまで、……わたしに、触らないで」

「ああ。分かった」

 そして部屋を出た。……見送りにすら来てくれないんだな。寂しかった。切なかった。

 マンションを出て部屋を見据える。なにしにわたし……来たんだろう。徒労だったな。やれやれ。
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