おれが、おまえを、可愛くしてやる。
「あはい……ありがとうございます」

 おまえに背を向け、動き、おれは思う。――おまえはキスをされるときもあんな顔をするのだろうか。無防備で――気を許した顔を。また――胸が、きゅっ、と締まる。切なくなる……。ああ、おれ、やばいな……。

(本気でおまえのことが……好きだ)

 キスしたい。抱きしめたい。あの美しいお姫様をベッドのうえに押し倒したらいったいおまえはどんな顔をする? 戸惑う? 拒む? ……決まってんじゃねえか。馬鹿だなおれ。

 キッチンでカモミールティーを用意しておまえに出し、それから、クローゼットのなかに仕舞いっぱなしだったハサミを取り出したときに、その冷たい感触に驚くと同時に――胸の奥がどうしようもなく、焦げるように切ないということに気が付いた。

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