おれが、おまえを、可愛くしてやる。

◇#06. ファーストキスのその先に

 指さばきがすごい。……本物の美容師さんみたいだ。

 ケープをかけられ、あのドレッサーの椅子に座り。わたしは――浅葱さんに髪を切って頂いている。ブロック分け……しないんだ。手つきに迷いがない。驚くほどさくさくとどんどん……髪を切っていく。

 よかった。不安がなくもなかったが……ごめんなさい浅葱さん。わたし、美容師さん以外のかたに髪を切って貰うのは初めてなの。あんなにも難しいことが出来るなんて……このひとは、

(どれだけの努力を重ねてきたのだろう)

 ああ……なんか、やばいな。目がうるうるしちゃう。わたしは……気分を変えるべく、浅葱さんに話しかけた。「浅葱さんは……普段からメイクされているんですか? すごい手つきでしたよね……迷いがなくて……本当に、ありがとうございます」

「普段は日焼け止めを塗るのと。若干アイシャドウを足す、後は眉を描く程度かな」とよどみなく手を動かす浅葱さん。体幹鍛えてんだな、姿勢がすごくいい。「休みの日はちょっと……最近赤系メイクが流行っているからなぁ。することはある。……男性がメイクをするのは当たり前の時代だからなぁ」
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