おれが、おまえを、可愛くしてやる。
 ふん、と浅葱さんが鼻を鳴らした。「おれがおまえを好きにするとしたら割と大変なことになっちまうが」

 ……ええと? このひと、わたしの誘いを昨晩、拒んだかた――ですよね?? なに言ってるのだろう。

 わたしは、わたしの前に回り込み、ブラシとハサミを手にした浅葱さんに――

「信じてますから。浅葱さんのこと」

「そうか。分かった」――もしかしてわたし。この場で、浅葱さんに押し倒して欲しいとか――思っている? 嘘でしょう? 自分の気持ちが、分からなくなる……純平が、笹塚さんを好きだと言って……すごいすごい、ショックを受けていたはずなのに。

 わたしの人生すべて、純平一色だった。あのひとがわたしの青春そのもの。――だった、はず、なのに……。

 まぶたを下ろすとさくさくと前髪を切られている気配。そして、……ブラシかなにかで顔にかかった前髪を払われているみたい。気持ちがいい……。

「おいおまえ。――どうした」

「どうしたもなにも……」わたしは顔を振って言い切った。「全部全部……っ……浅葱さんのせいじゃ、ないですか……っ。なにもかも全部、浅葱さんのせいなんです……っ!!
 
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