おれが、おまえを、可愛くしてやる。
 ああもう。調子が狂う。おまえ――従順なお姫様じゃなかったのかよ。こんなに可愛い顔して、サディストの女王様の仮面を隠し持っているだなんてあざとすぎる。

「昼まで寝ちまっておれら、サド侯爵の小説に登場する登場人物みてえだな。……城貸し切って朝から晩までやりまくるやつ」

「だね」ふふ、と笑って身を起こすおまえは、「どうしよっか。……そろそろわたし……着替えとか取りに行きたいな」

 不思議に思っておれは尋ねた。「……おまえんち、この近くだっけ?」

「ここどこでしたっけ」

 ……そんなにも記憶がなかったのかよ。あぶねえなぁ。苦笑とともにおれは伝える。「うちは、花見町《はなみちょう》駅から徒歩十分のところにあんの。あとで、道案内してやるよ」

「あーそうなんですかー。……うちもそこ住みたかったんですけど、家賃の問題で断念しまして……」

「じゃあ、うち、来ればいいじゃない」

 ぽかん、と口を開いたおまえが愛おしい。おれはおまえの髪を撫で、

「さっきも言っただろ。……おれ、おまえなしじゃもう、生きていけねえ。

 一緒に暮らそう。望海……」

 * * *
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