おれが、おまえを、可愛くしてやる。
 ……ふ、と笑みが漏れた。名案が浮かんだからだ。決まって男は、職場恋愛を隠す傾向にある。その慣例に乗っ取り――おれは。

「ああ。……きみの相手がおれだってのは伏せておこう。くれぐれも、公私混同はしないように。……ちなみに加藤は、おまえのこと、なんて……呼んでんの?」

「あ……」ためらいながらもおまえは、「『のぞみん』」

 ――急速に脳が沸騰する。機関車トーマスが煙を吐くのってこういう感覚なのか。頭んなかが――マグマになっちまったみたいだ。

 くそう。……おれの、望海を……最愛のファム・ファタールを、『のぞみん』だと……?

 加藤に罪はないのだがおれのなかでこころは固まった。さぁ。後は、実行に移すだけだ。

 勿論その晩もたっぷりとおまえを愛し。おまえと一緒に眠り――おまえの肌の感触、髪の香り、ぬくもり、もろもろを脳髄に叩き込んでおれは――翌日への闘志を、燃やした。

 * * *
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