おれが、おまえを、可愛くしてやる。
 釈然としないものを感じる。……きみは、ぼくの渡したキャラメルマキアートに口をつけなかった。大好きだったのに。なのに――いまのきみは、こんなにも、割り切れる。きっと今頃あいつと――。

 分かっている。自分がこの物語の主人公ではないことくらい。主役はきみとあいつだ――けど。

 けれど。

 自分が、不用意な発言さえしなければ、結果は違ったのだろうか。こうして、きみを奪われてぼくは自覚する。この想いは――笹塚さんに対するものとは別のものなのだと。きみは特別でいつでも――最愛のひとなんだ。

 夜、静かなカフェにて。ひとり、手のひらを見つめ思い返す。きみと出会った頃の――それから、きみへの想いを育んだ青春の日々を。

 * * *

 昔、ぼくは、太っていた。別に、このことを隠す主義にはない。

 うちの親は毎晩大量に唐揚げを食べるタイプで。ゆえに――ぼくはぶくぶくと大きくなった。身長も結構大きいほうだから、『お相撲取り』と陰であだ名付けされていることも分かっていた。

 友達がいなかったわけではない。ただ……女の子には話しかけづらかった。『引く』のが分かっているからだ。
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