偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません

プロローグ

 ソシアルグランドホテルのバンケットルーム前のホワイエには、簡易の受付テーブルが設けられていた。

 入口には白い案内板が立てられている。
『対外文化発信プロジェクト説明会』

 企業関係者、自治体職員、文化団体の代表などの名刺交換の声が低く交わされ、会場はざわめきに満ちていた。

 受付テーブルで忙しそうに働いているのは桜葉(さくらば)依織(いおり)。大手旅行会社であるグローバルリンクツアーズに勤務して二年目で海外企画部の事務アシスタントだ。

 焦げ茶色の柔らかそうな髪を一つにまとめ、来客の対応をしている。
 大きな目と真っ白な肌は焦げ茶の髪色とのコントラストもあって、清楚な雰囲気の持ち主だった。

 誰にでも優しく接するところが長所だが、優しいゆえに頼まれると断れないところもある。
 それがまさに今こうしてここにいる理由だ。

『重要なゲストが来たら、即座に役員のところまで連れてくるように』

 そう言われて、上司に名簿を渡されていた。
 粗相があってはいけない外務省のゲストと聞いている。
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