偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
 普段は事務アシスタントとして書類の用意や資料の準備を行っており、こんなバンケットルームでの受付なんて華やかな仕事はしたことがない。
 緊張しながら依織は受付の仕事を進めていた。

「すみません。受付はこちらでいいですか?」
 依織に話しかけてきたのはまぶしいくらい端正な顔立ちをした男性だった。
 身長は高くて百八十センチはありそうだ。

 きりりと隙のない立ち姿で、真っすぐな眉の下の切れ長な目は静かに依織を見ていた。

「はい。お名前をお伺いできますでしょうか」
東條(とうじょう)悠臣(はるおみ)です」

 それはまさに粗相があってはいけない外務省のゲストの名前だった。
 想像していたよりも若い人が現れたので依織は一瞬驚いたけれど、何とか動揺を抑えて役員のところに案内する。

「こちらにどうぞ」
「ありがとうございます」
(こんなに若くて偉いなんて、すごい人なのね)

 少し離れたところから見ると、役員が彼に気を使っているのがよく分かった。

 よし、重要な仕事が一つ片付いたと依織はまた受付に戻って、来客者に笑顔を向け資料を手渡した。
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