偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
 奥の一角に東條の部屋があるということだった。
「ひとつの建物に最大で4世帯まで。入口も全て別だから、ほとんど顔は合わせないね」

 部屋の中はメゾネットになっている。
 広めのリビングダイニングには、モダンなデザインの中にぬいぐるみやおもちゃを置いた一角があって、春花のために準備していたという言葉が嘘ではなかったことを証明していた。

 おもちゃのある一角はシンプルでモノトーンのシャープなイメージの部屋の中、異彩を放っている。
 依織はつい、笑ってしまった。
「なんで笑ってる?」

「だって、あの一角、可愛くて……」
 すでに春花はたくさんのおもちゃに夢中だ。
「ママー、これあそんでいいの?」

「たくさん遊んでいいよ。全部春花のだから」
「パパ、ありがとう!」
 東條が笑顔で返事をすると、わーい! と春花はおもちゃで遊びだした。

 帰り道にデパートで買ってきたデリカテッセンを東條はテーブルに並べていた。
 依織は横に並ぶ。
「手伝います」

「ありがとう。本当は何か作った方がいいんだろうけど、この家を買ってまだ間もない。住むには問題ないけど、キッチン道具は足りないものもありそうだから」

 キッチン道具が足りなくても、春花のためにおもちゃを揃えてくれていたことに、依織は心が温かくなる。

 この人を好きになってはいけないと何度も心に言い聞かせてきたはずなのに、そんなことも忘れてしまいそうだった。
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