偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
「よかったです」
「あと、英語を話す依織がセクシーだった。柔らかいリシーヴド・プロナンシエイションは依織に似合う」
 ひそっと耳元でそんなことを囁く東條の方がセクシーだ。

 リシーヴド・プロナンシエイションとは落ち着いた響きのイギリスなまりの英語を指す。
 イギリスで伝統的に正しい英語とみなされている発音だ。聞き分けられる東條もすごいと依織は感じる。

「丁寧に話そうと思うとそうなっちゃうんです」
 うう、と依織は両頬を手で押さえる。ふっと笑った東條が依織の耳元にまた口を寄せた。

「Shall we speak in English today?」(今日は英語で話そうか?)
「What do you mean.」(なにを言ってるの?)
 依織は言い返す。

「ふ……っ、参ったな」
 二人で笑いながら立食のビュッフェを取りに行く。そんな依織と東條を見ている目があることに二人は気づいていなかった。

「悠臣!」
 華やかな女性が東條に声をかけてくる。
 東條は先ほどまでの柔らかな雰囲気ではなくスイッチが入ったように、表情を消して彼女に返事をした。

「橘さん、こういうところで名前呼びはやめてほしい」
「同期なんだからいいじゃない。あちらに、イストラニアの大使がいらっしゃったわよ。東條さんに挨拶したいって言ってたわ」

「承知した。依織、いい?」
 東條は一緒に、という意味で声をかけたのだが、橘は依織の腕を軽く取って引き止める。
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