偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
「彼女は私と一緒にいるから、ご挨拶だけ行ってくれば?」
 東條が見るとイラストニア大使はひとりで来ているようだ。
「少しだけ、挨拶してくる」
「はい。いってらっしゃい」

 東條が依織のそばを離れると、橘は態度を変えた。
 軽く髪をかきあげて、大きなため息をつく。
「たまにいるのよね。勘違いする人が」

「勘違い、ですか?」
 何のことを言っているのか、依織には分からない。
「悠臣は東條家の三男よ」
 依織は首を傾げる。

「東條グループは非上場だから、世間的には知られていないけれど、もともとは海運で日本でも有数の企業だわ。彼のお父様が本家の次男で会社を継がれていないけれど、直系であることには間違いない」
「だから、何ですか?」
 依織は真っすぐに橘を見返した。

 東條が資産家であることは察しがついている。
 それは前に交際した時のマンションも、今のレジデンスからも想像がついていた。

 けれど、依織が惹かれたのはそこではないからだ。
 自分の命を賭してでも任務のために海を渡った東條。その責任感の強さ、依織と別れたのも大事に思ったが故だ。
 強さも優しさも全てひっくるめて東條悠臣という人物が愛おしく、彼を信じると決めている。
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