偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
 依織はもともと堪能だった英語に加えて、最近は第二言語のフランス語をブラッシュアップしていると聞いているし、ポーランド語やチェコ語の簡単なフレーズについても勉強しているようだ。

 自分の語学力を生かす仕事をしたかったと東條に言っていたこともあり、東條の妻はまさにその依織の希望にぴったりと合うものだったのだろう。

 インバウンドのための企画をしたくて勉強していたことも、活きていた。
 さらに控え目でありながら、お淑やかで人を気づかうことのできる性格は相手を穏やかな気持ちにさせる。
 それは東條だけでなく、交流相手にも発揮されていた。

 だから依織のところにも、以前交流した国の外交官や妻が訪れている。
 依織は説明が上手で話していて楽しいから、あのように人が集まるのだろう。
 東條にとって自慢の妻だった。

 だからこそ自然に目に入っているから気づいた。
 依織に近づいていっている男性に。

 依織に気づいた男性は驚いた感じで依織に近づく。依織も男性に気づいて驚いた表情になる。
 その後のことだ。依織が親し気な笑顔を浮かべたのだ。

 そして、その男性と楽しそうに話し始めた。
 それは普段東條の妻としては見せない表情だ。

 依織がその知らない誰かに向けた笑みが、思いのほか胸に刺さった。
 痛みの正体に気づき、東條は苦く目を伏せた。
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