偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
 東條は胸の痛みの原因をこのままにしておくことはできなかった。
 普段にはない冷静さを欠いた状態で、東條は依織の方へ向かう。

 * * *

 ドレスの試着をした時に、正面から見たら品があったが、後ろが少し空いていることに依織は気づいていた。
「これって空きすぎじゃないかしら?」

 依織の疑問に外商員は笑顔で首を横に振る。
「東條さまはお背中もとても美しいですから、お出しになってもいいと思います。それに華やかな場所ですし」
 外商員が言っていることも分かるが、やはり露出を大きくすることが望ましいと依織は感じなかった。

「褒めていただけて嬉しいし、このドレスはとても素敵だけれど、露出は気になるわ」
「申し訳ございません。美しいので、つい私どもも奥様が日本の代表となられることを自慢に思ってしまった。丁寧な造りのレースのショールがございます。こちらを添えてはどうですか? 実はスロベニア製なんです」

 スロベニア製のレース。それは東條の担当している東欧地区だ。
 今度の交流会は特に東欧に関連があるわけではないが、今後使うのにもいいかもしれない。

 そんな考えが頭に浮かぶ。
「こちらをいただきます」
 きっと外商員にはお見通しだったに違いない。

 東條の祖父の代からお世話になっているデパートだと言っていたのだから。
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