偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
 夕暮れが街をゆっくりと染めていく。店を出ても繋がれた手が離れることはなかった。離す理由なんてどこにも見つからない。

「また来ような」
 その一言はまるで未来まで約束された気がして、依織は弾むような気持ちで頷いた。

 * * *

 時間は少し戻って、対外文化発信プロジェクトの説明会当日のこと。

 東條の朝は、決まって同じ時間に目が覚める。目覚ましが鳴る前だ。
 目覚ましはあくまで保険。それを使うことはほとんどない。

 ベッドから身体を起こすと、大きく伸びをしてまずは目覚ましを止める。
 カーテンを開けると、まだ人の少ない街が見えた。

 寝室を出てキッチンに向かい、カップボードからコップを取り出すと、ウォーターサーバーの水を注いだ。
 水を飲んだらその場でコップを洗い、水切りラックの上に置く。

 そのまま洗面所に向かって歯を磨き、また寝室に戻り奥のウォークインクローゼットの引き出しからジョギングウェアを取り出した。
 着替えてサイドテーブルで充電していたスマートウォッチを着ける。
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