偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
 白い歯が見えてドキッとする。
「付き合っているんだよな?」
 甘く優しい声が聞こえて、胸をドキドキさせながら依織は東條の口の中に飴を放り込む。

「心臓に悪いです」
「桜葉さんが食べさせてくれるから、すごくおいしく感じる」
「もう……!」

 からかわれて依織が軽く膨れると、東條は手のひらを差し出してきた。さすがに依織でも分かる。手を繋ごうということだろう。

 そっと手のひらに指先を乗せると、指を絡められる。
 隣を歩く東條との距離はさっきまでと同じはずなのに、急に近く感じた。
 一瞬言葉が出なくなる。気まずいわけじゃなく、ただ、意識してしまっているだけ。

 心臓の音がうるさいくらい響いて、手のひらに伝わる体温がじんわりと広がる。
 歩く速度は自然に揃っていた。

「なんか、緊張する」
 東條が笑う。
 その声にやっと息ができるようになって、依織も小さく笑った。
「同じです」
 手だけではなくて、心も繋がった時間だった。

 一緒に街並みを散策し、食べ歩きをする。疲れたねと言ってカフェで休憩し、気づいたら日が落ちかけていた。
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