偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
 いつもの優しい表情に、取り越し苦労だったのかもと思い始めていた依織はリビングに違和感を覚えた。
 とは言え、違和感が何なのかは分からなかった。

 東條が依織のためにコーヒーを淹れて手渡してくれる。
 ソファに横並びで座った。
「東條さん、お話って……」

 それを聞いて、東條が大きく息を吸う。
「転属になって、長期で海外へ行くことになった」
「え……」
 依織は言葉を返すことができない。

 転属だから、海外に行くから何なのだろう。
「は……い」
「依織を連れては行けない国だ。ごめん。どこの国に何をしに行くのかは言えない」

 目の前が暗くなったようにも感じたが、依織は自分を奮い立たせて必死に笑顔を作り、隣の東條へ微笑みかける。
「けれど、戻ってくるでしょう?」

 こくりと東條は頷いた。その仕草に胸を撫で下ろしたのは一瞬だ。
「ただ、時期の約束ができない。半年になるのか、あるいは二年三年になるのかも分からない。具体的にどこの国へとは言えないけれど、今回担当している案件は正直、俺の命も完全に保障されたものじゃない」
「そ、んな……だって……」
< 53 / 59 >

この作品をシェア

pagetop