偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
依織はゆっくりと口を開いた。
「入籍もしないんです。お相手はいないから」
「え?」
「ひとりで、産むんです」
「そ……っか。事情があるのね? 手伝えることがあれば、何でも手伝うからね」
先輩は理由を聞かないで親切に対応してくれた。けど、きっとこんな反応ばかりではないはずだ。
根掘り葉掘り理由を聞こうとする人だっているだろう。
それでも、なににも替えられないほど得難いものなのだから、大事にするのだと依織は決めていた。
「桜葉さん、妊娠のこと、御堂さんに言った?」
依織は首を横に振る。
「言ってないです」
「チームリーダーだし、言っておいた方がいいかも」
「……ですね」
確かにそれは事実として伝えなくてはいけないだろう。今後のこともある。
産休や育休を申請するのなら、上司への報告は必要だ。
それは分かってはいた。
依織は御堂に打ち明けることを決めた。