偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
 依織は病院の待合室で椅子に座り、大きくため息をついた。
 ここ二年、春花と離れたことはない。それだけでも落ち着かない心地だった。

「依織……」
 名前を呼ばれて依織は顔を上げる。
 軽く目を見開いた。そこにいたのは二年以上前に別れたはずの東條だったから。

 相変わらずスマートなスーツ姿で、ほとんど最近は服も買っていない依織は、恥ずかしくなって俯く。
「久しぶりだな」
「そうですね……。海外にいたのでは……」

「うん。先週帰ってきたところだった。俺は知り合いのお見舞いなんだけど、依織は体調崩した? 大丈夫?」
 依織の気持ちには気づかないのか、東條は待合室の椅子の隣に座る。

「なんだか、顔色が悪い。看護師を呼ぼうか?」
「大丈夫です」
 こんな姿で会いたくなかった。せめて、もっと違う状況ならよかったのに。

 着古したパーカーとデニムのパンツ。
 片や東條は相変わらずスマートな姿なのだ。
 依織は服の裾をきゅっと握る。

「元気だった?」
 優しい声は当時依織が大好きだった声だ。
「元気……です」
「でも病院にいる。なにかあった?」

「違うんです。私じゃなくて子どもが」
 そこでハッとして口をつぐむ。
「子ども? そうか、もう結婚してお母さんになったんだな」
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