偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
(気楽なことを言わないで……!)
 つい、口をついて言葉が出てしまう。
「救急で入院になったんです! そんな、そんなものじゃない」

「そうだよな。ごめん、こんな場所で不謹慎だった。お子さんは幾つ?」
 二歳だと言えば分かってしまうかもしれない。あの時、あの唐突な別れがどれほどつらくて、立ち直るまでにどれほどかかったか。

 立ち直る間もなく、依織は妊娠出産と大変な時期を過ごしてきたのだ。
 東條は頭がよくて、勘もいい。
(本当のことは言えない)

「い……一歳です」
「可愛い盛りなんだろうね。入院か、それは心配だろう」

 その時看護師が声をかけてくる。
「桜葉さん、春花ちゃんのことで……あ、ご主人ですか?」
「違います!」
 依織は反射的につい大きな声が出てしまう。

 東條は苦笑して依織と看護師に向かって軽く頭を下げた。
「知り合いのお見舞いに来て、たまたま会ったんです。私は失礼します」

 依織がうつむいていると、綺麗に磨かれた靴が視界でくるりと振り返り、去っていった。ぎゅっと依織は拳を握った。
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