偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
「依織は前においで」
 東條が真っすぐ見つめてくる瞳に、依織は逆らうことができなかったからだ。

 以前に助手席に座った時は、胸がときめくような気持ちだった。今も緊張はしているけれど、あの頃とは違う。

 きっと東條はもう察している。
 そんな気がした。

 ハンドルを握る横顔は相変わらず精悍で、もう恋なんてしないと思っていたはずの依織をドキンとさせる。

「連絡先を削除したね」
「ごめんなさい」

 東條は苦笑する。
「責めているわけじゃない。別れようと言ったのは俺だったのだし」

 ハンドルを握っていた東條が口元に拳を寄せた。帰り道の途中で車を寄せて停める。
「後悔した」

 軽く眉間にもシワが寄っていて、本当に悔やんでいる様子なのが分かる。真っすぐに依織を見る。
 その瞳はあの頃と変わっていなくて、依織の胸はドキンと跳ねた。

「あの時はあれがベストだと思ったんだ」
「……っ! 私がどれほどつらかったか、東條さんには分かりません」

 東條から顔を逸らして、依織はぎゅっと自分の服の裾を握る。
 運転席からは静かな声が聞こえてきた。
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