未完の恋、指先で溶かして
「それでも、一緒に居たかったんだよ。真紘が好きなのが私じゃなかったとしても」


 ぽつりと零された真広の言葉が、ひどく痛々しく胸に刺さった。

 その気持ちは、痛いほどよく分かる。相手が俺を見ていなくても、せめて隣にいられるなら、なんてそんな愚かな願いを、俺だって何度も抱いてきた。

 けれど、その先に待っているのは、俺も彼女も幸せになれない未来。歪んだまま繋ぎ止めた先に待っているのは、緩やかな破滅でしかない。

 俺は手元のグラスを軽く揺らし、黄金色のウィスキーを氷に這わせた。
 カラン、と小さな音を立てて氷が角を落としていく。

 その様子をただ見つめながら、真広の言葉を反芻していた。


「何で片想いってやめられないんだろうな」

「…佐久間くんらしくない弱音ね。俺は諦めるつもりないとか、そんな風に言うのかと思ってた」

「諦めたいよ。こんなきつい思いするくらいなら、いっそのこと」


 自嘲気味に吐き捨て、俺はグラスに残っていたウィスキーを喉の奥へ一気に煽った。

 今夜はこれで終わりにするつもりだった。これ以上ここにいても、惨めな想いが積み重なるだけだと分かっていたから。

 だけど、ふと隣に目をやった瞬間、言葉が止まった。

 真広は、今にも決壊しそうな表情を必死に堪え、震える唇を噛み締めていた。その姿を目にしてしまったら、彼女を一人にして帰るなんて出来なかった。
< 11 / 69 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop