未完の恋、指先で溶かして
「真広」
そう呼びかけ、彼女の顔をこちらに向かせた。
「…飲み直す?」
不意に投げた俺の問いに、彼女は僅かに目を見開いてこちらを見つめた。
こんな風に女性を誘うことなんて、今まで一度もなかった。だけど、今夜だけは、俺もひとりでいることに耐えられそうになかった。
お互いに同じような傷を負っている。その隙間を、ほんの少しの間だけ埋め合うことくらい、許されるのではないか、なんて、そんな風に考えて。
俺は彼女の耳元に顔を寄せ「その気になったら連絡して」とだけ囁いた。そのまま俺は席を立ち、彼女をその場に置いていく。
想い人がいる身で他の誰かを求めるなんて、世間的には不誠実なのかもしれない。
結局、人間は…、いや、俺自身が、どこまでも自分の欲に忠実な生き物だということを証明してしまったのだと思う。
だけど、逃げ場もなく自分の感情に追い詰められ、このまま潰されていくことには耐えられなかった。もしこの苦しさを抑えきれず、いつか本人にぶつけてしまったら、それこそ取り返しがつかなくなる。
そんなのはただの言い訳。分かっている。だけど、たまにはそうやって逃げることを、自分に許してやりたかった。
罰なら、もう十分すぎるほどに当たったはずだから。
真広がもし来れば、俺達は互いの本心を隠し、偽りの熱で溶け合う共犯者になる。
そう呼びかけ、彼女の顔をこちらに向かせた。
「…飲み直す?」
不意に投げた俺の問いに、彼女は僅かに目を見開いてこちらを見つめた。
こんな風に女性を誘うことなんて、今まで一度もなかった。だけど、今夜だけは、俺もひとりでいることに耐えられそうになかった。
お互いに同じような傷を負っている。その隙間を、ほんの少しの間だけ埋め合うことくらい、許されるのではないか、なんて、そんな風に考えて。
俺は彼女の耳元に顔を寄せ「その気になったら連絡して」とだけ囁いた。そのまま俺は席を立ち、彼女をその場に置いていく。
想い人がいる身で他の誰かを求めるなんて、世間的には不誠実なのかもしれない。
結局、人間は…、いや、俺自身が、どこまでも自分の欲に忠実な生き物だということを証明してしまったのだと思う。
だけど、逃げ場もなく自分の感情に追い詰められ、このまま潰されていくことには耐えられなかった。もしこの苦しさを抑えきれず、いつか本人にぶつけてしまったら、それこそ取り返しがつかなくなる。
そんなのはただの言い訳。分かっている。だけど、たまにはそうやって逃げることを、自分に許してやりたかった。
罰なら、もう十分すぎるほどに当たったはずだから。
真広がもし来れば、俺達は互いの本心を隠し、偽りの熱で溶け合う共犯者になる。