未完の恋、指先で溶かして
«Side Mihiro.»


 佐久間くんにバーに残されて、すごく悩んだ。オレンジ色の液体が揺れるグラスを見つめたまま、思考をぐるぐると巡らせる。

 真紘への気持ちを誤魔化すように佐久間くんといることを選ぶのがいいことなのか。

 真紘的には私に諦めてもらった方が気持ちは楽だと思う。だから、彼には私が佐久間くんのところに行く方が都合がいい。

 佐久間くんは、もう彼女への気持ちを手放してしまったのか。それとも諦めようとしているのか。

 私にはわからない。佐久間くんは昔からどこか掴めない人で、何を考えているか読めない人だった。

 それに、私が佐久間くんと関わることで、もし迷惑をかけてしまったら、とスキャンダルのことなどもちらついた。

 これは真紘との時も十分に気を付けていたことだけれど、もし佐久間くんに迷惑をかけるようなことになったら…。それに、恋人なんて説明もできない佐久間くんとの関係性は厄介すぎる。

 重い溜息と一緒に、溶けきった氷の音がカチリと鳴る。

 どうするか悩み続けて三十分程経った。スマートフォンの液晶の光が、暗い店内で白く浮き上がる。そのまま掴み、佐久間くんとのトーク画面を開く。

 誰かに縋りたいって気持ちは、私にもある。
 だけど、お互いに利用しあう関係は虚しくないのだろうか。

 そう考えがちらついたけれど、私は佐久間くんの手を取ってしまった。


«飲み直す»


 とだけ佐久間くんに連絡を送ると、送って数分後に住所が送られてきた。

 それを見て会計をし、一度帰路に着いた。

 夜の冷えた空気に当たりながら、これから始まる厄介な関係の重みを、もう一度深く考え直していた。
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