`未完の恋、指先で溶かして
「寝室、使っていいよ。俺はソファで寝る」


 そう言って離れようとする彼に、私は「いや、いいよ! 私がソファで寝るよ!」と返した。

 ここに来て断った挙句、図々しくベッドを借りるなんてできない。

 そう食い下がると、佐久間くんはクスッと笑みを零した。


「いいよ。女の子の方が冷えやすいんだから。呼んどいてソファで寝ろなんて言わないよ」


 そう言いながら、私の背中を優しく押す。先ほどキスしたことなんて、まるで忘れたかのように自然に触れてくる。

 何も気にしていないのか、気にしていないふりをしているのか。

 今日で、もっと佐久間くんのことが分からなくなった。


「…じゃあ、甘える。ごめんね」

「いいよ。ゆっくり休んで」


 寝室には、大きなベッドとデスク、本棚があるだけ。至ってシンプルな部屋だ。

 私が中に入るのを確認すると、佐久間くんは静かにドアを閉めた。

一人きりになると、部屋中に満ちている彼の匂いがして、落ち着かない。

 普段は常に真紘のことを考えているはずなのに、佐久間くんの傷付いた顔を思い出すと、胸が痛む。

 それは同情からなのか、それとも気持ちが分かるからなのか。
 私自身にも理解ができない。

 これから、佐久間くんとどう向き合っていけばいいのか。
 一度崩れた形は、元に戻るのだろうか。

 ベッドの上に横になり、深く息を吐く。

 今の私の脳内は、佐久間くんに侵されている。
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