未完の恋、指先で溶かして
 そんなことがあった週明け。俺はいつも通りに出社した。

 だが、今日ばかりはどうしても佐野と森山に顔を合わせづらい。佐野の元カノに手を出そうとして、おまけにそれが森山を忘れるための行為だったなんて、我ながら後ろめたさが酷かった。

 だったら最初からやるなよ。
 
 そんな正論は百も承知だが、起きてしまったことを反省する以外、今の自分にできることはない。それがまた余計に情けなかった。

 真広はあの後、「私もわかっていてついて行ったところがあるし、気にしないで。むしろ、気を遣わせちゃってごめんね」と謝って帰っていった。

 彼女に非なんて一つもない。それなのに、俺のプライドを傷つけないよう自分も悪かったことにしてくれる。その出来すぎた振る舞いが、救いであると同時に、どうしようもなく惨めだった。

 デスクで深く溜息を吐いていると、こういう時に限って会いたくない相手は現れる。


「佐久間さん」

「ああ、もう本当やだ。お前、何でこんな時に来ちゃうわけ」

「はい?」


 デスクに突っ伏したまま、俺は怪訝な顔をする佐野に理不尽な言葉を投げた。

 今だけは勘弁してくれよ…。

 そんなことを心の中で思いながら、ゆっくりと顔を上げた。
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