未完の恋、指先で溶かして
 佐野との打ち合わせを終え、昼休みまで淡々と業務をこなした。

 正直に言って、この仕事に情熱があるわけではない。大学でそれらしい学科を専攻し、映画研究部で時間を潰し、まあ、この仕事でいいかと流されるままにキャリアを選んだ。

 周囲からはしっかりしていると評されることが多いが、実態はただ流れに身を任せ、気ままに生きているに過ぎない。ただ、とことん調査し、データを精査し、根拠を固めて人に伝えるという作業は、俺には合っていたのだと思う。

 やりがいも、楽しさも、これといって感じない。ただの惰性で、続けられる限りは、このままこの仕事を続けていく。

 カウンター席で一人、溜息を吐きながらスマートフォンを片手にラーメンを啜っていると、真広から通知が入った。何事かと思って開くと、«今日、暇してる?»という意外な文面だった。

 真広からこんな風に誘われるのは珍しい。というより、普段は連絡を取り合うことすらほとんどない。先週末の再会が、ある意味で切れていた縁を無理やり繋ぎ直してしまったのかもしれない。


«まあ、何で?»

«今日も会えないかな?»


 先週会ったばかりで、こんな近々に会うことは普段はない。だけど、断る理由も特に見当たらず、«どこで会う?»と返すと、すぐに既読がついた。


«家、行くね»


 画面を見つめたまま、俺はますます首を傾げた。あの夜のことがあった直後に、俺の部屋へ来るなんて。こいつ、危機感が足りなさすぎない?

 そこまで出かかった小言をなんとか抑え込み、俺はひとまず、目の前の伸びかけたラーメンに再度手を付けた。
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