未完の恋、指先で溶かして
「…なあ、話変わるけどさ」

「話がコロコロ変わる事なんて慣れてますよ」

「お前、もう森山のこと何とも思ってないの?」


 不意に投げかけた問いに、佐野の表情が目に見えて硬くなった。

 佐野は、森山が俺と同じ会社でコピーライターとして働いていることを知らない。俺もあえて言わなかったし、これからも教えるつもりはなかった。


「好きなんだろ」

「好きじゃないです」

「嘘吐け、ばーか」


 何でこんな男のどこがいいのか、俺にはわからない。
 絶対に、俺の方が彼女を幸せにできるのに。

 喉元まで出かかった言葉を、かろうじて飲み込む。そんなことを口にすれば、森山のこれまでの想いを踏みにじることになると分かっていたから。

 彼女が幸せになってくれるなら、それでいい。
 なんて、そんなのはただの格好つけた建前。

 本当は俺を見てほしい。俺を選んでほしい。
 俺の手で、幸せにしてやりたい。

 だけど、彼女が佐野を選んだから、俺は心のどこかで諦めを抱えながら見守ってきた。それなのに、こいつはあの子を振った。未練を残したまま、理由も語らず。

 俺が視線を向けても、佐野は目を伏せたまま、ただ塩ラーメンの麺を口に運んでいた。


「なあ、佐野」

「何ですか」

「この業界やめる前に、うちに来いよ」


 その瞬間、具を掴んでいた箸がピタリ、と止まる。
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