未完の恋、指先で溶かして
「…何でですか。もう、書けないのに」
書けない理由は、あえて聞かなかった。ただ一つ分かっているのは、佐野はまだこの仕事を愛していて、断ち切れない未練を抱えているということだけ。
俺は、佐野という才能がこのまま潰れていくのを、黙って見ていたくはなかった。
コピーライターという肩書きでなくてもいい。どんな形でもいいから、この業界に踏みとどまっていてほしかった。本音を言えば、ライバルとしてではなく、一度彼と同じチームで仕事をしてみたかった、というのもある。
だから俺は、佐野をヘッドハンティングすることに決めた。
森山がうちの会社にいることを、伏せたまま。
もし告げれば、佐野は間違いなく身を引くと思った。自分が近くにいることで、彼女を再び傷つけてしまうと考えて。だから俺は、あえて言わなかった。
「…でも、俺は」
「一緒に働こう、佐野。俺は、佐野に来てほしい」
佐野が紡ごうとした拒絶を遮るようにして、真っ直ぐに言葉を重ねる。佐野は困ったように眉を下げ、視線をこちらに向けたまま黙り込んだ。
困らせている自覚はある。それに、もしここで佐野が俺の誘いに乗れば、俺自身の恋が叶う確率は限りなくゼロに近づくだろうということも、痛いほど分かっていた。
けれど、そんな打算よりも、俺はただ佐野と仕事がしたかった。
森山を想う気持ちと同じくらい、俺は佐野という人間を大切に思っていたし、こんなところで、佐野に挫折を味合わせたくなんかなかった。
書けない理由は、あえて聞かなかった。ただ一つ分かっているのは、佐野はまだこの仕事を愛していて、断ち切れない未練を抱えているということだけ。
俺は、佐野という才能がこのまま潰れていくのを、黙って見ていたくはなかった。
コピーライターという肩書きでなくてもいい。どんな形でもいいから、この業界に踏みとどまっていてほしかった。本音を言えば、ライバルとしてではなく、一度彼と同じチームで仕事をしてみたかった、というのもある。
だから俺は、佐野をヘッドハンティングすることに決めた。
森山がうちの会社にいることを、伏せたまま。
もし告げれば、佐野は間違いなく身を引くと思った。自分が近くにいることで、彼女を再び傷つけてしまうと考えて。だから俺は、あえて言わなかった。
「…でも、俺は」
「一緒に働こう、佐野。俺は、佐野に来てほしい」
佐野が紡ごうとした拒絶を遮るようにして、真っ直ぐに言葉を重ねる。佐野は困ったように眉を下げ、視線をこちらに向けたまま黙り込んだ。
困らせている自覚はある。それに、もしここで佐野が俺の誘いに乗れば、俺自身の恋が叶う確率は限りなくゼロに近づくだろうということも、痛いほど分かっていた。
けれど、そんな打算よりも、俺はただ佐野と仕事がしたかった。
森山を想う気持ちと同じくらい、俺は佐野という人間を大切に思っていたし、こんなところで、佐野に挫折を味合わせたくなんかなかった。