`未完の恋、指先で溶かして
そんな時の事だった。
俺と佐野と森山が一緒に仕事をすることになった商品。
───ビター・ノアール。
ビコンビニでも約五百円はする、市販品にしては高級感のあるビターチョコレート。
そのプロジェクトの会議が始まってから、森山がよく相談に来るようになった。
彼女は元々ストプラにいたこともあり、当時上司だった俺が頼りやすいのだと思う。
キャッチコピーを作るにあたって、俺は"気持ちを切り替え、一日を乗り越える、働く大人達のためのチョコレート"というコンセプトを立てた。
だけど森山は、どうしても"ご褒美"という観点も入れたい、という悩みを抱えていた。
俺の計画とズレてしまうのではないか、そんな不安を、彼女は懸命に話してくれた。
「もう少し詳しく聞かせて。どうしてそう思ったのか、とか」
「昨日、実際に食べてみてわかったんです。苦さは確かに、気持ちをすっきりさせ、喝を入れてくれる。でも、やっぱり後から来るほんのりした甘さも表現したくて…。欲張りかもしれませんが、両方伝えたいんです」
森山らしい考え方に、思わず口元に笑みがこぼれた。
本来、コンセプトは絞った方がターゲットに刺さりやすいと思っている。だけど、商品のすべての良さを伝えたいという彼女の懸命な姿勢は、コピーライターに向いていると感じた。
元々、彼女は入社当時からコピーライターを志望していたが、すぐには叶わなかった。
それでも二年前、粘り強く人事部を説得して異動を実現させた彼女は、今、俺の予想を上回るほどの働きを見せてくれている。
俺と佐野と森山が一緒に仕事をすることになった商品。
───ビター・ノアール。
ビコンビニでも約五百円はする、市販品にしては高級感のあるビターチョコレート。
そのプロジェクトの会議が始まってから、森山がよく相談に来るようになった。
彼女は元々ストプラにいたこともあり、当時上司だった俺が頼りやすいのだと思う。
キャッチコピーを作るにあたって、俺は"気持ちを切り替え、一日を乗り越える、働く大人達のためのチョコレート"というコンセプトを立てた。
だけど森山は、どうしても"ご褒美"という観点も入れたい、という悩みを抱えていた。
俺の計画とズレてしまうのではないか、そんな不安を、彼女は懸命に話してくれた。
「もう少し詳しく聞かせて。どうしてそう思ったのか、とか」
「昨日、実際に食べてみてわかったんです。苦さは確かに、気持ちをすっきりさせ、喝を入れてくれる。でも、やっぱり後から来るほんのりした甘さも表現したくて…。欲張りかもしれませんが、両方伝えたいんです」
森山らしい考え方に、思わず口元に笑みがこぼれた。
本来、コンセプトは絞った方がターゲットに刺さりやすいと思っている。だけど、商品のすべての良さを伝えたいという彼女の懸命な姿勢は、コピーライターに向いていると感じた。
元々、彼女は入社当時からコピーライターを志望していたが、すぐには叶わなかった。
それでも二年前、粘り強く人事部を説得して異動を実現させた彼女は、今、俺の予想を上回るほどの働きを見せてくれている。