未完の恋、指先で溶かして
 酒が進むにつれて、テーブルには次々と料理が揃い始めた。話題は仕事がメインだったけれど、アルコールが回るほどに、会話は少しずつプライベートな領域へと溶け出していく。

 俺はふと気の抜けたタイミングで、森山と佐野が今、どれほどの関係性にあるのかを探ってみることにした。


「最近さ、佐野とはどうなの?」


 そう問いかけた瞬間、森山の手が分かりやすく止まった。


「うーん…」


 明らかに答えに窮していた。森山自身、佐野との関係をどう定義すればいいのか分からず、俺の質問に困っている様子だった。

 その反応だけで、二人の間に何らかの変化があったことだけは伝わってくる。


「じゃあ、聞き方変えようかな。佐野の事、どう思ってる?」


 そう重ねて問いかけると、森山の表情がほんの少しだけ和らいだ。その一瞬の緩みで、もう答えを聞かなくても分かってしまった。

 彼女はきっと、佐野にどんなに冷たく突き放されようが、理解しがたい態度を取られようが、今も変わらず彼を想っているのだと。


「…まだ、好きです。ずっと」

「そっか」


 傷付かないわけではないけれど、どこかで覚悟していた答えでもあった。そりゃそうだよなと、納得する自分もいた。

 大学時代、二人は悔しいほどにお似合いだった。普段は滅多に笑わない佐野が、彼女にだけは優しい表情を見せる。その隣にいる森山も、この上なく幸せそうで…。

 それなのに、大学卒業を機に、何も言わず急に彼女を突き放した佐野のことが理解できなかった。

 後から理由を問い詰めたこともある。だが、「自分に余裕がない」といった、明らかに本音を隠した言葉を並べるだけだった。
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