未完の恋、指先で溶かして
 森山はあの時のことを、まだ引きずっている。

 理由も知らされず、何が何だか分からないまま突き放されたのだから、当然、諦めなどつくはずがない。森山も俺と状況は違えど、叶わない恋に身を焦がす一人だった。

 どう見ても両想いなのに、佐野がなぜか頑なに反発している。そのせいで互いに傷つけ合って、あいつは馬鹿としか言いようがない。

 早く素直になればいい。傷ついているのは自分だけじゃない。大事な人が傷ついている姿を見て、何も思わないのか。失ってからでは、何もかも遅いというのに。

 俺には決して向かない森山の気持ちが、佐野には全力で向けられている。それを見て見ぬふりをするあいつが、無性に腹立たしかった。


「私…、何がダメだったんでしょうか」


 森山はそう零すと、机に突っ伏した。涙を見られたくないのか、俺から顔を隠すようにして。

 その震える声が痛々しくて、聞いていられないほどだった。


「…森山」

「…っ、大好き、なんです。今も…、…でも、よくわかんなくて…」


 俺には彼女の頭をそっと撫でることしかできなかった。

 こんなときに、「俺にしとけばいい」なんて言葉を軽々しく吐けるはずもない。森山がどれほど苦しみながら、それでも佐野を見つめ続けているか、痛いほど理解しているから。

 これ以上傷つく前に、誰か彼女を早く幸せにしてやってほしい。

 それが俺ではないことも、分かっている。
 その非力さが、たまらなく苦しかった。
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